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貫入技術
概要
油圧による静荷重を用いて杭を地中に押し込む圧入原理では、「杭材」「圧入力」「地盤」のバランスが重要です。圧密された砂質地盤や礫・玉石を含む地盤など、土質条件によっては杭の貫入が困難な場合があります。そのような硬質地盤に対して杭材の強度をあげ、より大きな圧入力を持つ機械を導入すれば三要素のバランスが取れ施工を行うことができますが、杭材費と施工費が大きく膨らんでしまいます。そうした場合に、地盤の貫入抵抗力を軽減し、圧入力を必要最小限に抑え、ゆとりある反力によって効率的な施工を実現するために、圧入工法では種々の貫入技術が実用化されています。
ウォータージェット併用圧入
優位性
貫入抵抗力を低減することで小さな力で圧入できるため杭の損傷を防止できます。また、施工状況に応じて噴流水の量を自在に調整できるため、地盤への影響を最小限に抑えることができます。圧入工法では、すでに施工が完了した完成杭を反力とするため、ウォータジェットを併用して圧入された杭の周面摩擦抵抗力が、施工直後に十分回復していることを確認できます。
砂質地盤へ杭や矢板を圧入する場合、ウォータージェットを併用することで貫入抵抗力を効果的に低減できます。杭先端近傍に取り付けたジェットノズルから、必要に応じて高圧水を地中に噴出することで、土粒子間の間隙水圧を一時的に高め、土粒子が移動しやすい状態を作り出します。また、地上に湧きあがろうとする噴流水で杭の周面を潤滑させながら、継手部に侵入した土石の締め固まりを防ぎます。所定の深度に達したらジェットノズルとジェットホースを回収します。
ウォータージェット併用圧入のメカニズム
パイルオーガ併用圧入
砂礫・玉石層や転石・岩盤層などの硬質地盤※1でも杭や矢板を圧入できるよう、オーガ掘削と圧入を連動させることで貫入抵抗力を低減する、独自の「芯抜き理論」を実用化した貫入技術です。圧入機と一体制御のオーガ装置「パイルオーガ」により杭先端の直下地盤を掘削し、パイルオーガを引き抜きながら隙間を埋めるように杭を圧入します。泥岩、砂岩、花崗岩などの軟岩Ⅰ、軟岩Ⅱ、中硬岩に分類される岩盤への圧入が可能な同技術は「硬質地盤クリア工法」として実用化されています。
- ※1
- 地盤とは、玉石混りの砂礫層や岩盤層を含む地盤の総称で、 N値では50以上が目安となります。
芯抜き理論のメカニズム
優位性
芯抜き圧入では、掘削は圧入補助として最小限に抑えられるため排土量は少なく、周辺地盤を乱さないため大きな支持力を持った完成杭を構築できます。また、システム機器は完成杭をつかんでいるため転倒の危険性はなく、狭い場所や水上、傾斜地でも仮設桟橋等は必要ありません。パイルオーガ併用圧入は、環境にやさしく安全な方法で硬質地盤がもつ大きな貫入抵抗力を局所的に低減できます。
芯抜き理論のメカニズム
クサビ効果による玉石の粉砕
回転切削圧入
玉石層や岩盤などの硬質地盤はもとより、転石や既設の鉄筋コンクリート構造物など地中障害物も貫通して杭の圧入が可能で、圧入工法の適用地盤の範囲を飛躍的に広げた貫入技術です。回転切削圧入機「ジャイロパイラー®」を用いて先端ビット付き鋼管杭を回転させ、地中障害物を切削し貫通させ圧入します。同技術は、既設の構造物を残置したままで構造物の再生や機能強化を可能とした「ジャイロプレス工法®」として実用化されています。
回転切削圧入のメカニズム
優位性
無振動・無騒音をはじめとした圧入原理の優位性に加え、杭先端特殊ビットによる最小限の切削のため、排土はほとんどなく環境に与える影響を最小限に抑えることができます。杭の偏芯や変形が抑止され信頼性の高い高精度な完成杭を構築できます。